先端エレクトロニクスDAQセミナー2025/ 総研大講義「計測と制御」

お知らせ

サイト運用停止: 2025年8月1日(金) 16:00 - 8月4日(月) 9:00
(KEKつくばキャンパス停電およびサーバーメンテナンスのため)


目的・趣旨

理学実験系修士課程学生を主な対象に実験・観測システムに用いられるエレクトロニクス技術の基礎を習得するためのセミナーです。主な対象を修士課程学生としていますが、どなたでも参加する事ができます。

高品質の実験・観測データを得るためには計測装置に関する知識が必要不可欠ですが、研究の専門化が進むことで専門外の計測装置技術について学ぶ機会が減っています。現在の実験・観測で用いられる装置には高度なエレクトロニクス技術が採用され、その技術は年々高度になっています。そこで、計測装置に用いられているエレクトニクス技術の基礎を習得する技術セミナーを企画しました。それぞれの専門分野の講師の講義により検出器(センサー)信号処理からASIC技術, FPGA技術, 計算機でのデータ処理までの基礎を5日間で学ぶことができる内容です。

エレクトロニクス技術に興味を持つ若手の方やこれから実験・観測を始める多くの方々の参加をお願いいたします。

昨年(2024年)のWebページはこちらにあります。


今回の特別講義

タイトル: 量子コンピューターの計測と制御
講師: キュエル 三好健文
講師紹介: https://quel-inc.com/ja/company-2/


概要

講義内容はエレクトロニクス技術について学んだことがない物理系修士課程学生を対象に行います。半導体物性など物理系学生が学部で学ぶ内容を既知としていますが、他の事は仮定していませんので他の専攻の方も問題なく受講可能です。

実験・観測対象が変わると計測システムも変わりますが、その骨格をなす基礎技術や概念は同じです。加速器科学・天文・生物など広い分野の方々にも違和感なく学んでいただける内容です。

本セミナーは総合研究大学院大学の公開講義「計測と制御」として開催します。

  • 対象者:制限はありませんが、物理系学部生・大学院修士課程学生を想定した講義内容に設定しています。
  • 募集人数:オンライン制限なし。
  • 日程:2025年8月4日(月)~8月8日(金) (開始および終了時刻は時間割を参照してください)
  • 場所:オンライン(接続情報は登録した方にメールで送付予定です)
  • 言語:日本語
  • 申込期間:5月27日から7月4日
  • 参加費:無料
  • 主催:Open-It、総合研究大学院大学
  • 後援:KEKエレクトロニクスシステムグループ
  • 世話人:田中真伸 (KEKエレクトロニクスシステムグループ)
  • お問合わせは事務局(osc-mgrs[アットマーク]ml.post.kek.jp)までおねがいします。


日程

  • 8月 4日(月)9:15 - 16:50:  開会の挨拶、全体概要、システム概要、検出器Ⅰ、検出器Ⅱ
  • 8月 5日(火)9:15 - 16:50: アナログ信号処理、トランジスタの基礎、アナログデジタル変換技術
  • 8月 6日(水)9:15 - 16:50: 集積回路設計、デジタル信号処理Ⅰ、Ⅱ、FPGAを用いたDAQ技術概要
  • 8月 7日(木)9:15 - 16:50: 低温技術、量子コンピューターの計測制御、検出器システムの制御技術Ⅰ、Ⅱ
  • 8月 8日(金)9:15 - 12:30: 原子核および固定標的型加速器実験データ収集システム研究開発の現状とR&D連携、高エネルギーコライダー実験用データ収集システム研究開発の現状とR&D連携

時間割こちら(PDFファイル)

 

申し込み

申し込みはこちらのフォームに入力してください。

申し込んだが都合が悪くなり受講しなくなった場合は上記フォームに記入し、コメントの欄に受講をやめるなどと書いてsubmitしてください。

注意事項を読み手続きを進めてください。

注意事項

    • 参加資格:制限ありません。学生はもちろん社会人も参加できます。
      • 講義内容は物理系学部生・大学院修士課程学生向けに構成されています。
    • 総研大生の方への注意 
      • すでにCampusPlan履修登録をされている学生の方もこのページから申込みが必要です。申し込みページの「総研大単位取得」の項目は「単位取得を希望する」を選択してください。
      • 追加で履修登録を希望される学生の方は、主任指導教員の了解を得た上で、このページからの申込みのみお願いします(CampusPlandでの手続きは不要です。申し込みページの「総研大単位取得」の項目で「単位取得を希望する」を選択した総研大生の方の履修登録は、総研大学務課で行います)。
    • 参加費:無料
    • 総研大の単位取得を希望する他大学の大学院生の方への注意
      • 本セミナーは総合研究大学院大学の公開講義「計測と制御」として開催しますので他大学での単位として認定される場合があります(大学院学生に限る)。
      • 単位取得を希望する他大学の大学院生の方は、事前に所属大学事務(学務課等)に総研大の公開講義の単位が認定されるか確認し、7月4日までに、所属大学事務を通じて総研大学務課教務係(kyomu[at]ml.soken.ac.jp [at]は@に置き換えてください)へ特別聴講学生の受入依頼を行ってください。(注)所属大学事務の方に、受入依頼を行う前に総研大学務課教務係への連絡が必要であることをお伝えください。
      • 履修申請する場合でも本ページからの参加申し込みが必要です。
      • 単位取得のためには全講義の受講と後日レポート提出を行い評価を受ける必要があります(総研大生、他大学大学院生ともに)。

講義内容

各講義時間の詳細については「日程」の時間割を参照してください。
資料等を閲覧するためには後日受講者に配布するIDが必要です。講義資料は変更される可能性が高いので講義後に最終版をダウンロードしてください。

【全体概要】

  • 講義日:8月4日(月)
  • 講師:田中真伸 (KEK)
  • 概要:本集中講義の概要を述べ、一部足りない部分(イントリンジックノイズの考え方等)は補足を行う。
  • 内容:
    • 分野による計測制御システムの違い
    • 計測制御システムに要求されること(トップダウンで検討し、必要な個別要素を特定する)
    • データ収集に際して検討すべきこと(技術選択、不感時間、事象選別など)
    • センサーとの接続に関して検討すべきこと(センサーとは何か、S/Nとは何か)
      個別要素から再度システムを俯瞰する
  • 講義資料: テキスト

【検出器 Ⅰ】ガス検出器を利用した検出器

  • 講義日: 8月4日(月)
  • 講師:小沢恭一郎(KEK)
  • 概要:ガス増幅を利用した検出器について動作原理、特性と具体的応用例を示し、最近の検出器開発の動向を述べる
  • 内容:
    • ガス検出器とは
    • ガス検出器の特性や種類
    • 応用例
    • 最近の研究開発動向
  • 講義資料:テキスト 
  • レポート課題(単位取得希望者用)

【検出器 Ⅱ】半導体を利用した検出器

  • 講義日: 8月4日(月)
  • 講師:外川学(KEK)
  • 概要:半導体を利用した検出器について動作原理、特性と具体的応用例を示し、最近の検出器開発の動向を述べる
  • 内容:
    • 半導体検出器とは
    • 半導体検出器の特性や種類
    • 応用例
    • 最近の研究開発動
  • 講義資料:テキスト

【アナログ信号処理】

  • 講義日:8月5日(火)
  • 講師: 房安貴弘(佐賀大学)
  • 概要: 放射線検出器のフロントエンド回路を想定し、オペアンプを用いたアナログ信号処理回路の仕組みについて学ぶ。
  • 内容: 
    • オペアンプとラプラス変換
      • ラプラス変換について
      • オペアンプについて
    • オペアンプを用いた放射線検出器用回路
  • 講義資料:テキスト

【トランジスタの基礎】

  • 講義日:8月5日(火)
  • 講師:房安貴弘 (佐賀大学)
  • 概要: 放射線検出器のフロントエンドに用いられるMOSFETの動作原理から、増幅器(オペアンプ)を構成する手法までを学ぶ。
  • 内容:
    • トランジスタの仕組み
      • 半導体のpn接合
      • MOSFETの構造と動作原理
    • MOSFETによる増幅回路
      • 一段の増幅回路
      • 差動増幅回路
    • オペアンプ回路
  • 講義資料:テキスト
  • レポート課題(単位取得希望者用)

【アナログデジタル変換】

  • 講義日:8月5日(火)
  • 講師: 宮原正也(KEK)
  • 概要:現代の計測システムはコンピュータでデータ解析する為、検出器が出力するアナログ信号をデジタル信号へ変換する必要がある。本講義ではアナログ信号をデジタル信号へ変換する回路(ADC)技術と、その使用・評価方法などについて解説する。
  • 内容:
    • ADCの基本機能
      • 量子化(ビット数、サンプリングレート、参照電圧等)
      • サンプリング定理
    • ADCの性能表現
    • ADCの主要な変換方法
      • 変換アーキテクチャの概要とトレンド
    • ADCの評価方法
    • ADCを用いた物理実験用ASIC
  • 講義資料:テキスト
  • レポート課題(単位取得希望者用)


【集積回路設計】

  • 講義日:8月6日(水)
  • 講師: 宮原正也(KEK)
  • 概要:集積回路(ASIC)開発とはなにかについて述べる
  • 内容:
    • 集積回路概要と必要性
    • 半導体プロセス
    • 応用例
    • 最近の研究開発動向
  • 講義資料:テキスト
  • レポート課題(単位取得希望者用)

【デジタル信号処理 Ⅰ、Ⅱ】 

  • 講義日:8月6日(水)
  • 講師: 本多良太郎 (KEK)
  • 概要: 物理実験おいてデジタル回路はアナログ部分とコンピューターの間に入りデータの処理や通信の役割を担う。この講義ではデジタル回路の基本構成要素から通信技術までの概要に触れる。
  • 内容: 
    • デジタル技術概要
    • デジタル回路
      • 組み合わせ回路
      • 順次回路
      • 同期回路のタイミング
      • 回路例
    • データ通信技術
      • パラレル・シリアル通信
      • 装置内・装置間通信
    • デジタル回路の例
  • 講義資料:テキスト
  • 参考書(事前に読む必要はありませんが、予習するのであれば読みやすいと感じる書籍を選んで読んでください)
    • 内田智久、Open-It FPGAトレーニングコース事前準備資料(ID不要でダウンロードできます)
    • パターソン&ヘネシー、コンピュータの構成と設計、日経BP社
    • ハリス、ディジタル回路設計とコンピュータアーキテクチャ、翔泳社
    • 渡波 郁、CPUの創りかた、毎日コミュニケーションズ
  • レポート課題(単位取得希望者用)

【FPGAを用いたDAQ技術概要】

  • 講義日:8月6日(水)
  • 講師: 濱田英太郎(KEK)
  • 概要:デジタル回路を構築するために、FPGAが良く利用される。この講義では、FPGAがどのようなものか、どのようにして開発を進めるのか、どのようにDAQに使えるのか解説する。
  • 内容:
    •  FPGAの仕組み
      •    FPGAとは
      •    FPGAの基本構造
      •    ザイリンクス社FPGAの構成
    • FPGAファームウェア開発
      •    開発の流れ
      •    設計手法
    • FPGAを用いたDAQ
      •    一般的なDAQ回路
      •    COMET実験ストロー飛跡検出器用読み出し回路におけるFPGA
  • 講義資料:テキスト
  • レポート課題(単位取得希望者用)

【低温技術】

  • 講義日:8月7日(木)
  • 講師: 槇田康博 (KEK)、岡村崇弘 (KEK)
  • 概要:
  • 内容:
  • 講義資料:テキスト
  • レポート課題(単位取得希望者用)

【量子コンピューターの制御技術】

  • 講義日:8月7日(木)
  • 講師: 三好健文(キュエル)
  • 概要:
  • 内容:
  • 講義資料:テキスト
  • レポート課題(単位取得希望者用)

【検出器システムの制御技術 Ⅰ、Ⅱ】

  • 講義日:8月7日(木)
  • 講師: 江成祐二(KEK)
  • 概要:コライダー実験としてLHC・ATLAS実験を例に検出器システムの制御技術を紹介する。
  • 内容:エネルギーフロンティア実験であるLHC・ATLAS実験を例にして、陽子・陽子衝突型実験における粒子の生成反応について説明し、計測システムに求められる仕様を述べる。この実験では、強い相互作用による膨大な背景事象から興味ある事象を限られた時間内に選択する「トリガー」が非常に重要である。ミューオン検出器やカロリメータを軸にしたトリガーがどのように生成されるかを解説し、ハードウエアへの実装と制御技術についての紹介する。
  • 講義資料:テキスト
  • レポート課題(単位取得希望者用)

【原子核および固定標的型加速器実験データ収集システム研究開発の現状とR&D連携】

  • 講義日:8月8日(金)
  • 講師: 大田晋輔 (大阪大学)
  • 概要:原子核および固定標的実験についてのデータ収集システム研究開発の現状とR&D連携について
  • 内容:
    • 原子核実験とは何か
    • 求められる仕様およびその実現方法の例
    • SPADI-Aについて(組織を超えた研究開発連携とその現状)
  • 講義資料:テキスト
  • レポート課題(単位取得希望者用)

【高エネルギーコライダー実験用データ収集システム研究開発の現状とR&D連携】

  • 講義日:8月8日(金)
  • 講師: 山田悟 (KEK)
  • 概要:高エネルギーコライダー実験用データ収集システム研究開発の現状とR&D連携について述べる
  • 内容:
    • Belle-IIを例にしたデータ収集システムの例
    • コライダーエレクトロニクスフォーラム(プロジェクト横断型研究開発連携)の研究開発現状
  • 講義資料:テキスト
  • レポート課題(単位取得希望者用)


単位取得希望者の方へ

出欠確認について

受講姿勢評価のために毎日出欠を確認しますので、zoomにアクセスする際にフルネームと所属を記入してください。

レポート提出について

3つの課題を選択してレポートを提出してください。 (課題内容は各講義終了後にWebに掲載します、閲覧には別途連絡するIDが必要です)。

各講義毎に課題があります。選択した課題のみ提出してください。課題が複数の小問で構成されている場合は全ての小問を提出して一つの課題です。課題毎にファイルを分けてください

レポートは電子ファイルとして提出してください。手書きのレポートをスキャンしたファイルも可

以下の提出先へメールで送ってください。

  • 宛先: osc-mgrs[アットマーク]ml.post.kek.jp
  • 件名: 計測と制御レポート
  • 提出期限: 8月22日 (金)

不明な点などがある場合も上記宛先まで問い合わせてください。

補足: 受講姿勢と課題点の比率を2:3として評価します。

成績公開予定日:9月下旬ごろ ないしは成績評価+3営業日を見込んだ日程


ASICとは

Application Specific Integrated Circuit(ASIC)は特定用途集積回路の名前のとおりユーザーの仕様に応じて製作される集積回路で、放射線検出器の読みだしシステムで多用されています。以前は開発コストが高かったのですが、現在ではシャトルサービスと呼ばれる方法により安価に試作ができるようになってきています。現在では通常の電子回路基板を製作するくらいの金額で試作できるものもあります。
 

FPGAとは

Field Programmable Gate Arrays (FPGA)はユーザーがプログラム可能な論理(デジタル)集積回路です。近年、放射線検出器の読みだしシステムで多用されています。一つのFPGAに搭載できる回路規模は非常に大きくなっておりユーザーが希望する信号処理の多くは1チップに搭載できるようになりました。例えば、CPUを組み込みLinux OSシステムを動作させる事ができる程の回路規模を1チップに実装する事ができます。