放射線検出器用集積回路製作講習会 '09
ASICとは
Application Specific Integrated Circuit(ASIC)は特定用途集積回路の名前のとおりユーザーの仕様に応じて製作される集積回路で、放射線検出器の読みだしシステムで多用されています。以前は開発コストが高かったのですが、現在ではシャトルサービスと呼ばれる方法により安く試作ができるようになってきています。現在では通常の電子回路基板を製作するくらいの金額で試作できるものもあります。
概要
初心者を対象にしたASIC製作実習セミナーです。現在までKEK製作し動作確認されているアナログライブラリを使用することで、集積回路製作の初心者にも放射線検出器用アンプ等が製作可能です。(例として以前行ったセミナーをご覧ください。上の写真は以前この実習で製作したASICの写真と実習風景です。)特定用途向け集積回路ASIC(Application Specific Integrated Circuit)は今や先端の測定器開発には欠かせないものとなっており、皆さんもその名前を耳にすることがあると思います。ASICの開発にはプロセス技術、回路設計技術などのいくつかの技術が含まれており、初めての方はどこから手を付けてよいか戸惑うこともあるかと思います。そこでそのような方も含め講義においてアナログ回路設計、ノイズ、半導体プロセスなどの知識になじんでいただき、計算機を用いた実習及び自分自身の手によるアナログASICの製作を通し、ASIC開発にあたって必要となる基礎知識の習得を目指します。 ASICの製作に当たっては、KEKで開発済みアナログASICライブラリを題材にしたASICの実製作が可能であり、初めての方でも取り組み易くなっていますのでぜひお気軽にご参加ください。
- 対象者:大学院学生(学部4年生可:ただし旅費補助は不可)、若手研究者
- 申込方法:申込ページで必要事項を記入し申し込んでください。
- 申込:6月8日(開始)~7月10日(締切)(宿舎が必要な方は早めに申し込んでください)
- 旅費:若干名サポート可能です。
- 募集人数:10人程度(先着順)
- 事前に製作したいエレクトロニクスのアイディアを出していただくことで、成功率を上げたいと思います
- 予備知識:抵抗、コンデンサー、オペアンプ等の動作が理解できること
- 日程:2009年9月14日(月)~9月18日(金)10:00-16:00 2月ごろ出来上がったASICをテストするための実習にも参加していただく予定です。
- 場所:高エネルギー加速器研究機構(KEK)先端計測実験棟 多目的室
- 参加条件:参加される方は下記の作業を事前にお願いすることになります。
- 事前に7月に開催する高度化エレクトロニクス集中セミナーを受講していただくこと。
- 使用する半導体プロセスの秘密保持契約の書類にサインをいただきます。(BiCMOSもしくはCMOSプロセス)
- 事前にASIC製作用CADのインストールを行ったコンピュータを持参していただくため次の2つの作業が必要です。受講者には別途、詳細な情報をお送りする予定です。
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- CADライセンスの取得を事前にお願いします。これはソフトウエアの動作を確認していただくために必要であるとともに、大学へ戻ってからも同じ環境で開発を続けられるようにするためです。(参考 VDEC: http://www.vdec.u-tokyo.ac.jp)(登録手順例)
- CAD(Cadence, HSPICE, Calibre) インストール済みPCの用意をお願いします。インストール情報はこちらです。 Linuxが動作しているPCであればCADソフトウエアのインストールはほぼ問題がないかと思いますが全てについて確認をしているわけではありません。
- 主催:KEK IPNS エレクトロニクスシステムグループ
- 後援:加速科学総合支援事業、KEK測定器開発室
- 講師:谷口(KEK)、島崎(KEK)、田中(KEK)
- お問合わせはこちらまで
実習方針
このコースでは実際にASIC製作を行います。ASIC製作を通じて実践的な開発フローを身につけることを目的としています。最初に、すでに製作され動作しているASICを題材として、全体の構成および構成要素であるプリアンプ、シェイパー、コンパレータの機能についてシミュレーションを交えた解説を行います。続いてCMOS半導体プロセス(TSMC社 0.5umCMOSプロセス)についての基本的な知識を習得の後にレイアウト設計について実習を行います。基本的な設計フローが把握できた段階で、素子パラメータの調整によるカスタマイズや回路構成の変更など各自がテーマを決め、各自で設計に取り組んでもらいます。大学に持ち帰って設計することも可能ですが、初めての方は、まずはアナログライブラリを用いて製作し、実習期間内にレイアウト検証まで終わりにすることをお勧めします。設計終了後は一括して12月10日にテープアウトを行い、納品後に製造されたASICのテストを行い、持ち帰っていただきます(2月中旬予定)。
目的
セミナー受講後ASIC製作フローに関する必要最低限の知識と技術が習得でき且今後ASICを製作できるようにする。
受講前に復習して欲しい事
限られた時間内に効率よく習得してもらう為に以下の内容を復習してからセミナーに参加してください。
- 抵抗、コンデンサ等の理解、オペアンプの動作の理解
- 可能であればトランジスタの動作の理解
- 回路図・レイアウトエディタ(Cadence)およびSPICE(HSPICE)の基本的なオペレーションを習得済みの方、 であればなお効果的に製作に取り掛かれます。
内容
内容:基本的には午前中は講義中心の実習を行い、午後は午前中の復習及び事前に検討した各自の課題について個別に実習を行います。
1日目(9/14):シミュレーション実習I
全体の流れを説明した後、シミュレーションツールになじむためにバイポーラトランジスタ、MOSトランジスタを例にとり実習形式で動作させます。またデジタル回路(インバーター等)をトランジスタで構成し動作の内容を理解します。更にすでに実験で使用されているASICのアナログブロックの説明を行いながらアナログライブラリを題材にシミュレーションを通しアナログ回路の動作を理解します。(講師:島崎、谷口、田中)
2日目(9/15):シミュレーション実習II
前日に引き続きCMOSもしくはBiCMOS ASIC製作に使用するアナログライブラリの解説を行い、各自製作したいASICの一部もしくは全てのシミュレーションを行います。ここで出来上がったものを基に3日目以降のレイアウトと検証を行っていきます。(講師:島崎、谷口、田中、大和田)
3日目(9/16):レイアウト入門
会社の方にプロセスの話をして頂いたのち、アナログブロックの配線、トランジスタ、抵抗、コンデンサ等のパラメータ変更の方法を説明した後、CMOS、BiCMOSにわかれてアナログライブラリ(レイアウト)の説明をし実際に自分で接続、もしくはパラメータ変更を行います。(講師:根岸、藤田、島崎、田中)
4日目(9/17):検証ツール入門
前日までに製作したレイアウトを基に検証ツールを動作させます。(講師:根岸、島崎)
5日目(9/18):各自課題の相談及びサブミットまでの作業説明等
午前中ASICのサブミットまでの流れを説明した後、4日目までに不十分だったところについての実習、製作課題について講師との議論等を行います。
(講師:谷口、島崎、根岸、田中)
期待される効果: ASICの製作及び実践的な開発フローの習得自分で作りたいと思う回路ブロックを具体的に考えてくればより効果的です。(事前にご相談ください)
各自用意していただく物: CAD(Cadence/HSPICE/Calibre)インストール済みPCを1台御用意ください。受講決定者には後ほどメールで詳細情報をお知らせいたします。