μ-TPC readout system for SMILE
- 窪 秀利(代表:京都大学)
- 水本哲矢(京都大学)
- 田中真伸(IPNS KEK)
- 池野正弘(IPNS KEK)
- 内田智久(IPNS KEK)
- 岩城 智(京都大学)卒業
我々は、Sub-MeV〜MeV領域での天体γ線観測のために反跳電子の電子飛跡の三次元位置情報を取得可能なコンプトンカメラ Electron-Tracking Compton Camera (ETCC)を開発している。ETCCではコンプトン散乱体としてガス飛跡検出器Time Projection Chamber (TPC)を使用しており、その信号検出器としてμ-PICというマイクロパターンガス検出器を使用している。μ-PICは400 μmピッチのストリップ状の検出器で、anodeストリップと直行するcathodeストリップからなり、両ストリップの位置情報、およびTPCにおけるドリフト時間情報から3次元飛跡情報を取得可能である。
我々は、μ-PICを用いた一辺30-cmのTPC(μ-TPC)とそれを取り囲むピクセルシンチレータで構成される中型のETCCを用いた気球実験(SMILE-Ⅱ)を計画し、そのための軽量・コンパクト且つ省電力なμ-PICの信号読み出しシステムの開発が必要であった。そのために、μ-TPCフロントエンド用の省電力ASICをKEKと共同開発してきた。本プロジェクトでは、このASICとFPGAを用い、μ-TPC読み出しシステム全体を開発した。
- 省電力ASICを開発(FE2009bal) 1枚あたり、μ-PIC 16chの信号を処理するFE2009balチップを開発した。
- 1ボード(110×220mm)でμ-PIC 128chの信号を処理 μ-TPC readout boardは、FE2009balチップを8枚搭載しており、μ-PIC 128chのマルチチャンネルの信号を扱うことができる。
- デジタルhit情報(CMOS 2.5V)を100MHzで取得
- アナログ波形(32 ch sum×4)を50MHz 10bitのFADCで取得可能 (FPGA内で25MHz 8bitに落としている)
- 得られたデータはLVDS信号(32bit×33MHz)でVMEのメモリーボードへ送る
- 30×30cm2のμ-PIC (1536 ch)を12枚のボードで読み出す(計50W)
(Open-Itメンバー向け。ホーム›プロジェクト› uPIC› resource にある)
- 回路図(pdfファイル、DSNファイル)
- 基板図(pdfファイル)
- FPGAファームウェアのソースコード
- 128chデジタル飛跡データ取得用DAC設定UDP通信プログラム
- 取扱説明書(pdfファイル)
図1: ETCCの模式図
ETCCの内、赤線で強調されている"μ-TPC"と呼ばれる3次元ガス飛跡検出器に用いている二次元読み出し検出器"μPIC"の信号読み出し回路を本プロジェクトで開発している。
図2: 開発したASIC chip(FE2009bal)
図3: ASIC chip FE2009balの写真とブロック図(T.Mizumoto et al.,NIMA 800 (2015) pp.40-50.)
図4: 製作した基板開発した読み出しボードの写真とブロック図(T.Mizumoto et al.,NIMA 800 (2015) pp.40-50.)
基板左寄りにFE2009balチップが8つ(16strip/chip×8chip=128strip分)、真ん中付近に読み出し制御用のFPGAがのっていることが分かる。右端のコネクタは上から32strip sumのアノード出力4つ分、メモリボードへの32bitデータ送信用コネクタ(真ん中奥)、DAQ制御用LVDS信号入出力(真ん中手前)、Ethernetコネクタが並んでいる。
図5: 30cm×30cm×30cmサイズのμTPCとμPIC読み出し基板の設置例(一辺あたり3枚使用(128strip×3))
μPIC読み出し基板一枚あたりμPIC 10cm分を処理している。μPICは400μm pitchでstripが並んでいるが、この例では2strip分を読み出し基板に入る前でまとめていて、800μm pitch(128ch/枚)で読み出している。
図6: 開発したμPIC読み出し基板で図5の検出器を用いて取得した電子飛跡の例
- 「気球実験に向けたコンパクトな ガス検出器読み出しシステムの開発」 岩城 智他、2011年9月17日、日本物理学会秋季大会 弘前大学
- "Precise Low-Energy Electron Tracking Using a Gaseous Time Projection Chamber for the Balloon-Borne Gamma Ray Compton Telescope", T. Mizumoto et al., Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference (NSS/MIC), 2013 IEEE Conference Record
- "New readout and data-acquisition system in an electron-tracking Compton camera for MeV gamma-ray astronomy (SMILE-II)", T. Mizumoto et al., Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A, vol.800 (2015) pp.40-50 (arXiv:1508.00990 [astro-ph.IM])